ヒトパピローマウイルスによる感染で起こる病気は
ヒトパピローマウイルス(HPV)は2本鎖DNAウイルスの一つです。
感染経路は主に性交渉ですが、他にも出産時の母子感染も起こります。
ウイルスが皮膚や粘膜から侵入して感染が成立します。
HPVが感染すると、子宮頸がん、肛門がん、膣がん、陰茎がん、咽頭がんなどの原因になります。
その他にも尖圭コンジローマと呼ばれる病気が起こります。
HPVは100種類以上の型があり、その中でも16型と18型の2種類が子宮頸がんの原因の70%を占めています。
HPVは性交渉の経験のある女性の50~70%が一度は感染するとされています。
感染しても90%以上のヒトでは、感染して数年以内にウイルスは自然に排除される言われています。
日本と世界の子宮頸がんの発生状況
日本では年間に約10,000人の子宮頸がん患者が発生し、3000人前後の人が亡くなっています。
特に若い年齢層の子宮頸がん患者数が増えており、40歳未満の女性に限ると2番目に多いがんになっています。
日本では、2013年に予防接種法に基づき定期接種となりましたが、その直後に接種した人に痛みや運動機能障害がでたため、積極的な推奨が中止されました。
定期接種が開始されてから5年以上経過した諸外国ではHPV感染が劇的に減少し、同時に子宮頸がんの前がん病変も減少し、患者数も減少してお増す。
9価のHPVワクチンとは
これまで日本では、2価と4価のHPVワクチンが予防接種に使えるようになっていました。
これらのワクチンでは子宮頸がんの原因の型の約70%を防ぐことができました。
それに加えて今回、9価のHPVワクチンが使えるようになりました。
このワクチンによって子宮頸がんの原因となるHPVのほとんどを予防することができます。
この9価のワクチンは海外ではすでに使用されており、より高い予防効果が確認されています。
接種方法は9~14歳には2回、15歳以上の女性には3回接種します。
今回、日本でもこの9価のHPVワクチンが予防接種法で定期接種となります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症