抗生物質が効かない薬剤耐性菌が増えています。
風邪に抗生物質は百害あって一利なし
薬剤耐性のお話しの最終回です。
これまで薬剤耐性が今どのように問題となっているかお話ししてきました。
では、これから薬剤耐性にどう対応していけばいいのでしょうか?
答えは抗生物質を正しく理解し、正しく使うことです。
前回もお話しましたが、抗生物質がなければ薬剤耐性は生まれません。でも、抗生物質を使わなければ感染症は治りません。ですから、抗生物質を全く使わないことは無理です。
ただし、抗生物質を使わないで済むときには、なるべく抗生物質を使わないようにしましょう。
それには、抗生物質を正しく理解することが大切です。
ある調査によると、日本の若者は風邪に抗生物質が効くと思っている人が、欧州の若者より多いとの新聞記事を読んだことがあります。
風邪はアデノウイルスやコロナウイルスなどウイルスの感染症です。
抗生物質は細菌を殺したり、増殖を抑えるお薬ですから、ウイルス感染症の風邪に効果はありません。
そればかりか、抗生物質は他のお薬に比べると安全なお薬と思われていますが、ときにはひどい副作用が起こるともあります。
効果がないばかりか、副作用で体の調子が悪くなってしまえば、身も蓋もありません。
風邪をひいたときに抗生物質を飲むことは百害あって一利なしです。
寒さが厳しい季節になりました。次回からは肺炎のお話しをお送りします。
こうご期待
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症