子供たちと感染症
今年はコロナの影響で使えませんが、プールと感染症
今回は子供たちに多い感染症を取り上げます。
私自身は内科が専門ですから、実際に子供たちを診察する機会は少ないのですが、週に1回、近くの診療所で勤務しており、その時は子供たちの診察もしています。
子供は小児科の先生がご専門ですが、大人が小さくなっただけではなく、小児には大人と違う病気の側面があります。
私自身は小児科はあまり得意ではありませんが、今回は私自身ももう一度勉強し直してみます。
第1回目はこれからの季節に多くなる子供とプールと感染症がキーワードです。
いわゆるプール熱と呼ばれる感染症です。これはアデノウイルスによる咽頭結膜炎という感染症です。アデノウイルスはDNAウイルスに属するウイルスです。
このアデノウイルスがくっ付いた手で、目や鼻を触ることによって、感染します。プールでは、水の中にいるアデノウイルスが直接、目や鼻から入ってきます。
アデノウイルスによる咽頭結膜炎は1年中見られますが、多くは6月頃から増えてきて、7~8月に最も多くなるため、プール熱と言われています。
アデノウイルスが目や鼻から入ってくると、熱がでて、喉が痛くなり、目が赤くなったり、痒くなったりします。その症状が3~5日間ほど続きます。目の症状は最初は片目からおきますが、次第にもう一方も目にも症状がでます。
とくに治療することもなく、数日で自然に治ってしまいますが、目の症状がひどいときは眼科に行って、目薬などをもらってください。
予防には、こまめな手洗いがとても大切ですが、プールなどで一枚のタオルをみんなで使うと、たくさんの人に感染することがあるので、注意が必要です。
また、プールは一般に塩素消毒されていて、十分な塩素濃度があればアデノウイルスに感染することはありませんが、管理が不十分で塩素濃度が薄くなって時にもたくさんの患者さんが発生することがあります。
なお、学校は熱が下がって、目の症状が無くなって2日間過ぎてから登校できることになります。
今年はコロナウイルスの影響でプールを取りやめる学校が多いと聞いていますが、来年からまた注意してください。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症