最も小さな生き物。ウイルスによる感染症(最終回)
ウイルスの代表選手です。インフルエンザウイルス
ウイルスによる感染症の最終回は、前回と同じくRNAウイルスであるインフルエンザウイルスを取り上げます。
インフルエンザウイルスはウイルス学的にはオルトミクソウイルス科に属するRNAウイルスです。
インフルエンザウイルスはAおよびB型、C型の3種類があります。
B型インフルエンザウイルスは人にのみ保持されますが、A型インフルエンザウイルスは人以外の他の動物にも保持されています。
また、C型インフルエンザウイルスは人に重篤な感染を起こすことはありません。
インフルエンザウイルスは球形で、ウイルスの表面にHタンパク質とNタンパク質の二つのタンパク質をもっています。
この二つのタンパク質によってインフルエンザウイルスの抗原性が決まります。
抗原性は16種類のHタンパク質と、9種類のNタンパク質の組み合わせによって決まります。
例えば2009年に流行した新型インフルエンザウイルスはH1N1というサブタイプになります。
インフルエンザウイルスはこの抗原性を変異させることによって変化してきます。
この変異には連続変異と不連続変異の二つがあります。
連続変異とは毎年起こるHおよびNタンパク質の小さな変化で、これではサブタイプの変化は起きません。
不連続変異はHまたはNタンパク質の一方または両方が劇的に変化することによって、抗原性が大きく変化します。
この不連続変異はおそらく10~20年に1回程度の、ごくまれにしか起きないと言われています。
この不連続変異によってこれまで流行していたインフルエンザウイルスと異なるサブタイプのウイルスが感染すると
大多数の人はこれまで出会ったことのない新しいインフルエンザウイルスに感染することになり、これまでの免疫が全く役にたたないことになる。
このようににして新型インフルエンザウイルスが生まれてきます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症