最も小さな生き物。ウイルスによる感染症(第1回)
1型と2型は似ているけど、違う感染症を起こします。単純ヘルペスウイルス
今回から最も小さな生き物であるウイルスによる感染症を取り上げます。
ウイルスはその生物学的分類から、DNAウイルスとRNAウイルスに分けられます。
まず、第1回目はDNAウイルスの仲間である単純ヘルペスウイルスを取り上げてみます。
単純ヘルペスウイルスは遺伝子の配列が比較的似ている単純ヘルペスウイルス1型と2型に分類されています。遺伝子の配列は似ているこの2つウイルスですが、全く違く病気を起こします。
普通は、1型は上半身に、2型は下半身に病気を起こすとされています。
上半身に病気を起こす1型は子供たちの唇や、大人の喉に水ぶくれやかぶれなどの病気を起こし、口内炎や咽頭炎の原因となります。
そのほかには目に病気を起こすことがあり、角膜炎を起こすとひどい場合は失明することもあります。
最も、重症な病気は脳炎で、1型単純ヘルペスウイルスが原因の場合、適切な治療をしないと死亡することがあります。
それに対して2型単純ヘルペスウイルスは主に性器に感染を起こします。
性器に水ぶくれやかぶれなどの病気を起こし、性行為によって他の人に感染していきます。
時には妊婦に感染したヘルペスウイルスが出産とともに、赤ちゃんに感染し、新生児ヘルペス感染症を起こすことがあります。
このヘルペスウイルスは神経節細胞と呼ばれる細胞の中で、一生潜んでいて、人の免疫状態によって再び感染して症状を出すことがあります。
これも、1型は顔面神経の神経節に、2型は仙骨あるいは坐骨神経の神経節に潜んでいます。
治療には、アシクロビルと呼ばれる抗ウイルス薬が有効です。
また、感染はウイルスが手を介して、粘膜に付着することによって起こるため、こまめな手洗いがとても大切です。
次回もDANウイルスを取り上げることにします。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症