なんとなくどこにも属さない生き物たち(第3回)
つつがなく過ごすの由来になっています。リケッチア
今回はリケッチアの話題を取り上げます。
リケッチアはクラミジアと同じように細胞の中で増える生物です。
また、ほとんどのリケッチアによる感染症はダニ、ノミ、シラミなどの節足動物と呼ばれる生物によって人に感染します。
人に感染すると高い熱が出て、全身に発疹ができることもリケッチアによる感染症の特徴です。
リケッチアによる感染症として有名のものはつつが虫病があります。
このつつが虫病は健康に暮らすことをつつがなく過ごすといいますが、このつつがはこの病気に由来しています。
つつが虫病はダニに咬まれることによるリケッチア感染症です。
日本でも山形県、秋田県、新潟県に夏場に発生する風土病として知られてきました。
このダニは河原の藪の中に生息しているため、夏場に川の近くを歩いていると感染することがあります。
しかし、最近では温暖化の影響で、このダニが全国各地で見られるようになり、流行地域以外でも患者が発生しています。
つつが虫病は熱とダニに刺された後に残る刺し口と全身の発疹が特徴的です。
その他には全身のリンパ腺が腫れることがあります。
重症になると命に関わることもあるため、早期に適切な処置が必要です。
つつが虫病と同じくダニに刺されることによって発症するリケッチア感染症に日本紅斑熱があります。
こちらは関西以西の地域に多く、つつが虫病と同じように夏場に多くの患者が発生します。
リケッチアもクラミジアと同じように細胞内で増える生物なので、ペニシリンなどの一般的な抗生物質は効きません。
治療するときには、特殊な抗生物質を使うことが重要です。
最終回の次回はコクシエラを取り上げます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症