感染症を治す 抗生物質の話(第2回)
たくさんの種類の薬があります。 セフェム
抗生物質の話の第2回目はセフェム系薬を取り上げます。
セフェム系薬は抗生物質の中でもたくさんの種類のお薬があります。
バリエーションの豊かさでは、抗生物質のナンバーワンです。
セフェム系薬は抗生物質の働きから分類するとペニシリンと同じβ-ラクタム薬と呼ばれています。
お薬の化学構造の基本となるβ-ラクタム環と呼ばれる部分がペニシリンと同じなのです。
このβ-ラクタム環と呼ばれる構造にいろいろな化学構造をくっつけている抗生物質の仲間になります。
セフェム系薬は便宜上、第1世代から第4世代までに分類されています。
第1世代が最も古く、第4世代が最も新しセフェム系薬と言うことになります。
抗生物質を開発するときにこれまでのお薬の欠点を補いながら改良して結果です。
十数年前は、このセフェム系薬の新しい抗生物質が次々と開発されていました。
飲み薬も点滴の薬も、新しく開発される抗生物質はすべてセフェム系薬という時代もあります。
その反面で、たくさん種類があるこのセフェム系薬はたくさん使われてきました。
抗生物質が乱用されると、その抗生物質に効かない薬剤耐性菌が生まれます。
このセフェム系薬の乱用によって、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と呼ばれる薬剤耐性菌が生み出されました。
その後、このMRSAは院内感染を起こす代表的な菌として、多くの入院患者さんを苦しめる結果となりました。
抗生物質は正しく使わないといけないということが改めて認識されることになりました。
今では、新しいセフェム系薬は全く開発されなくなってしましました。
一時期栄華を誇ったセフェム系薬もその役目が終わりつつあります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症