RSウイルスはどんなウイルスか
RSウイルスはパラミキソウイルスと呼ばれるRNAウイルスの1種です。
ヒト、チンパンジー、ウシなどから分離されるウイルスです。
遺伝子を調べてみるとA型とB型に分かれます。
一般的にはA型のウイルスのほうが重症化しやすいと言われています。
主な感染経路は感染した患者の飛沫が手指や物品に付着し、それに接触することによって感染します。
界面活性剤やエーテルなどの消毒液で速やかに不活化されます。
RSウイルスは赤ちゃんでは多い感染症です
RSウイルスは乳幼児の肺炎の約半数、より年長の子供の肺炎では10~30%の原因と考えられています。
入院が必要となるような重症の肺炎はほとんど3歳以下で、多くは生後2~5ヶ月の赤ちゃんです。
流行は冬にピークがあり、初春には流行が収まります。
日本では11月~1月までに毎年流行がみられ、インフルエンザの流行のピークとは同じにはならないといわれています。
RSウイルスは子供に肺炎を起こします
RSウイルスに感染した子供は風邪のような軽い症状から重症の肺炎まで呼吸器感染を起こします。
感染すると2~8日の潜伏期間の後で熱や鼻水などの風邪ような症状がでます。
その後で、咳がでますが、咳が長く続いたり、だんだんひどくなってくると肺炎を起こしてきます。
さらにひどくなるとゼーゼーいったり、呼吸困難などの症状がでてきます。
多くは、入院して3~4日で症状が治まって、7~12日で自然に治ってきます。
しかし、未熟児や先天的な心臓や肺の病気がある赤ちゃんや、他の病気が原因で免疫力が低下した赤ちゃんでは重症となることがあります。
また、RSウイルスは高齢者の肺炎の原因となることもあり、ときどき老人ホームなどの高齢者施設で集団発生をすることがあります。
RSウイルスの治療は
RSウイルスの感染で肺炎を起こした小児の治療は酸素投与や輸液などの対症療法を行います。
現時点でRSウイルスに有効な薬はありません。
また、遺伝子組み換え 技術を用いて作成された、RSウイルスの表面蛋白の一つであるF蛋白に対するモノクローナ ル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)を用いて、重症化しやすい赤ちゃんでは流行期に投与することによって感染予防を行います。
今回、初めてRSウイルスに対するワクチンが開発され実用化されつつあります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症