経鼻ワクチンは粘膜ワクチンと呼ばれる新しいワクチンです。
これまでのワクチンは注射して人に投与してきました。
それに対して、経鼻ワクチンは粘膜ワクチンと呼ばれるワクチンの一種で新しいワクチンです。
注射で投与するこれまでのワクチンは血管内や全身の臓器内で抗体を作って感染を防ぎます。
それに対して粘膜ワクチンは粘膜の上で抗体を作って感染を防ぎます。
注射のワクチンでは主にIgGと呼ばれる抗体が作られるのに対して、粘膜ワクチンはIgAと呼ばれる抗体も一緒に作られます。
高橋奨励賞受賞記念講演_送付用.pptx新型コロナウイルスなど鼻や口の粘膜から感染するウイルスにはこの粘膜ワクチンはウイルスの侵入そのものを防ぐ効果も期待されています。
インフルエンザワクチンでも経鼻ワクチンが開発されています
この経鼻ワクチンはインフルエンザワクチンとしても開発されています。
家の防犯に喩えれば、注射型ワクチンは「免疫=警察官」を「体=家」の中に配備し、侵入してきた「病原体=泥棒」を捕まえます。
粘膜ワクチンは、家の中の警備に加え、窓や玄関に鍵をかけて侵入そのものを防ぐことにより、病原体の侵入阻止と重症化予防という二段構えの防御免疫が期待できます。
さらに、注射で投与するワクチンは注射することによる痛みがありますが、経鼻ワクチンにはその痛みがありません。
また、発熱や倦怠感などの全身の副反応も粘膜ワクチンでは少なくなる可能性があります。
このように粘膜ワクチンは従来の注射のワクチンに比べて、感染を防ぐ効果も高く、さらに安全なワクチンとなる可能性があります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症