コロナとインフルエンザは同じ仲間のウイルス
生物学的に新型コロナとインフルエンザの違いを確認してみましょう。
ウイルスの分類としては、どちらもRNAウイルスに属しています。
ウイルス学的には新型コロナウイルスはプラス鎖RNAウイルスで、インフルエンザウイルスはマイナス鎖RNAウイルスになります。
コロナウイルスが細胞質内で複製するのに対して、インフルエンザウイルスは核の中で複製が行われます。
極端に少なかったこの2年間
インフルエンザは例年、12月中旬から流行が始まり、2月頃にピークを迎え、3月下中には終息します。
ただ、2019/20シーズンのインフルエンザはこれまでの統計の中では極端に患者数が少ないシーズンとなりました。
2019年末から2020年初頭にかけてA(H1N1)pdmの小流行がみられ、2020年に入ってB型が散見されたものの、新型コロナウイルスの第4波の流行が始まった2月以降は、急速に患者報告数が減少しました。
この傾向は2021/22シーズンも同じ傾向で、インフルエンザの患者数は極めて少ない結果になりました。
豪州でのインフルエンザの急増
新型コロナウイルスの流行がなかった以前は、南半球の流行状況をみて、わが国の流行の予測やワクチン株の選定などを行っていました。
今は新型コロナウイルスの流行下ですので、同じような予測が可能かどうかはわかりませんが、この2年間夏の流行期のオーストラリアでの患者数は日本と同様に極めて少なくなっています。
ところが、今年の夏は豪州でのインフルエンザの患者数が急増しています。
確かに、この2年間に豪州やニュージーランドはロックダウンも含めた厳しい制限をしてきました。
しかし、今では制限はほぼなくなっています。
そのことが、インフルエンザの患者数の急増の一因と考えられます。
そう考えると、日本でも制限が緩和われた今シーズンはインフルエンザの患者が増えることが懸念されます。
例年以上にインフルエンザワクチンの接種が推奨されます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症