ゾコーバはどのようにして新型コロナウイルスに効くのでしょうか
ゾコーバは新型コロナウイルスの3CLプロテアーゼと呼ばれる酵素の働きを邪魔します。
この酵素は新型コロナウイルスの成分を作るタンパク質を合成することに必要なものです。
この酵素が阻害されると新型コロナウイルスはヒトの細胞の中で増えることができなくなります。
さらにこの酵素はどの変異株でも同じものですから、変異株でも効果があると考えられています。
ゾコーバの実施の効果は
日本と韓国で400例くらいの新型コロナウイルスの患者に投与した臨床試験が行われました。
その結果、薬を飲んだ患者さんでは、偽の薬を飲んだ患者さんより早くウイスルの量が減ることが判りました。
だたし、12項目の症状が改善したかどうかを比べてみると偽の薬を飲んだ患者さんと違いがありませんでした。
また、オミクロン株で多くみられる鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れなどの症状は、偽の薬と比較して有意な改善効果を確認したとされています。
さらに、薬を飲んだ患者さんに特に問題となるような副作用がないことも報告されています。
薬の緊急承認とは
すべての薬は実際に患者さんに投与する前に薬事承認というプロセスがあります。
これは、厚生労働省に設けられた薬事審議会を呼ばれる委員会で討議されます。
すべての薬は臨床試験を行って、その結果をこの委員会に報告します。
その報告をもとに、各委員がその薬の有効性(効くかどうか)と安全性(重大な副作用はないか)を確認して最終的な判断をします。
ただし、普通はこのプロセスの結果がでるまで数年の時間が必要になります。
そのため、社会的に今すぐにでも薬の使用が求められている場合は緊急承認を行うことになりました。
今回、このゾコーバを緊急承認するかどうか、近々判断されます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症