アビガンはどんな薬か
- 本来はインフルエンザに有効な薬剤
- 催奇性の副作用から新型インフルエンザにのみ使用
- 一般のインフルエンザの治療には使用しない
アビガンは新型インフルエンザの治療薬として承認された薬剤です
新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスです。
そのことから、アビガンが新型コロナウイルスにも有効ではないかと考えられました。
実際に試験管内で行った実験ではアビガンが新型コロナウイルスの増殖を抑制することが示されました。
アビガンの臨床試験の成績
新型コロナウイルスの患者にアビガン臨床試験が行われました。
最初の臨床試験はアビガンとプラセボ(偽薬)を用いてその効果を比較しました。
しかし、この臨床試験は投与する医師には本当の薬は偽薬かわかるようになっていました。
そのため、医師の判断にバイヤスがかかる可能性があり、公正な臨床試験とは判断されませんでした。
ただし、この臨床試験の結果では、患者さんからウイルスが早く少なくなったり、症状も総合的に判断すると偽薬より効果があったことが判りました。
そのため、今回の臨床試験では、医師にも偽薬であるかどうかわからないようにして試験が行われました。
しかし、オミクロン株の流行によって新型コロナウイルスの患者さんの症状が軽症であることが多く、最終的には偽薬と比べて大きな差は認められませんでした。
そのため、オミクロン株を主体とした現在の新型コロナウイルスにはアビガンを投与しても効果がないと考えられ、臨床試験は中断されました。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症