MERSはどのような感染症か
中東呼吸器症候群(MERS: Middle east respiratory syndrome)は、2012年にサウジアラビアで初めて確認されたMERSコロナウイルス(MERS-CoV)による感染症です。
MERSコロナウイルスは今回の新型コロナウイルスと同じコロナウイルスの1種です。
2013年11月にサウジアラビアにおいてMERSコロナウイルスに感染したヒトコブラクダとの濃厚な接触後に発生した1死亡例が報告され、ラクダからヒトへの感染が確認されました。
このことからMERSコロナウイルスをもっているヒトコブラクダから人に感染することがわかりました。
ただし、日本で飼われているヒトコブラクダを調べた結果、MERSコロナウイルスをもっているラクダはいませんでした。
世界中でのMERSの発生状況は
世界中ではサウジアラビアを中心に中東諸国で流行しています。
報告数の約7割はサウジアラビアで発生しています。
一部にはヒトコブラクダと接触歴が不明のものや、院内感染と思われる事例もあります。
中東以外では2015年に韓国での集団発生があります。
中東諸国への渡航歴のある1人の男性を発端に2015年5月~7月の間に16の医療機関で計186例の症例が報告されました。
その中には39例の医療従事者の感染例も含まれています。
MERSコロナウイルスに感染するどのような症状がでるか
MERSコロナウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。
2~14日の潜伏期間の後で、咳や痰などの上気道炎や肺炎の症状が出てきます。
ほかには下痢などの消化器症状を認めることもあります。
重症になると1週間程度で呼吸困難などを伴う重症の肺炎を起こします。
致死率は20~40%と極めて高いとの報告もあります。
現時点では有効な治療薬やワクチンはないため、感染しないようにすることが重要です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症