エイズウイルスの発見
1981年、米国の西海岸で原因不明の感染症が、男性同性愛者の間で流行しました。
この病気は何らかの原因で、免疫力が低下することによって様々な感染症に罹患しやすくなり、後天性免疫不全症候群(エイズ)と命名されました。
1983年にフランスのルイ・パスツール研究所のリュック・モンタニエ博士とそのグループが、エイズの原因となるウイルスを発見し、HIVと命名しました。
また、1984年にはアメリカのロバート・ギャロ博士のグループも同様の発見を報告し、HIVがエイズの原因であることを確認しました。
世界全体でのHIV感染症の疫学(2023年時点)
- HIV陽性者の総数:約3800万人
- 新規感染者数:年間約170万人
- エイズ関連死者数:年間約68万人
- 治療を受けている人:約2750万人
サハラ以南アフリカ
全世界のHIV陽性者の約3分の2がこの地域に集中し、新規感染者数は年間約100万人
東ヨーロッパ・中央アジア
感染者数は増加傾向で、特に薬物使用による感染が多い。
アジア・太平洋地域
感染者数は約560万人であるが、特定の国や地域では依然として高い感染率を示す。
ラテンアメリカ・カリブ海地域
感染者数は約210万人で、新規感染者数は横ばいまたは減少傾向にある。
北アメリカ・西ヨーロッパ
感染者数は約230万人で、新規感染者数は減少傾向にある。
日本でのHIV感染症の疫学(2023年時点)
- HIV陽性者の総数:約3万人
- 新規感染者数:年間約1,000人前後
- エイズ発症者数:年間約400人前後。
新規感染者の約7割は同性間の性的接触であり、母子感染や血液製剤による感染は現在はまれである。
東京都、大阪府、愛知県などの大都市圏で感染者が多く、地方では新規感染者数はいまだ少ないが今後も注意が必要である。
日本おける新規HIV感染者数はほぼ横ばいですが、まだ明らかな減少傾向は認めていません。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症