オロプーシェウイルスとは
オロプーシェウイルスは南米の熱帯地域で流行するオロプーシュ熱の原因ウイルスです。
1955年にトリニダード・トバゴの発熱患者から分離・同定されました。
ブラジルだけでも50万人以上が感染したと推定されており, デング熱に次いで南米で蔓延しているウイルス感染症です。
ブラジルでは特にアマゾン熱帯雨林を中心に複数の州で集団発生が報告されています。
2024年にはキューバでも発生し、イタリアでもキューバで感染したヒトが診断されました。
媒介する昆虫はヌカカ(Culicoides paraensis)やネッタイイエカ(Cx. quinquefasciatus)と呼ばれる小さな昆虫です。
オロプーシェウイルスに感染するとどんな症状か
潜伏期間は3~8日で、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛など症状がでます。
通常は軽度で、数日から1週間で自然に回復します。
稀に髄膜炎や脳炎を起こすことがありますが, これまでに死亡例は報告されていませんでした。
6割の患者が回復後1カ月以内に同じようなの症状を示すことが報告されていますが、原因はわかっていません。
現時点で有効なワクチンや治療薬はありません。
これまで南米以外での報告はないが, 疫学調査が十分行われていないため、他の地域での感染状況は不明です。
予防にはこれらの昆虫から刺されないようすることが重要です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症