黄色ブドウ球菌とエンテロトキシンとは
黄色ブドウ球菌は、ヒトを取り巻く環境やいろいろな動物や鳥などに広く分布しています。
健康な人の鼻、喉、腸管などにも生息して、健康者の20 ~30%は保菌しています。
黄色ブドウ球菌が食品中で増える時にエンテロトキシンと呼ばれる毒素を作ります。
エンテロトキシンはトリプシンなどの消化酵素や熱に対して抵抗性があります。
多くのブドウ球菌による食中毒はA型と呼ばれるエンテロトキシンによって起きます。
エンテロトキシンはT 細胞を特異的に活性化し、短時間に多種類のサイトカインを大量産生させる作用があり、「細菌性スーパー抗原」とも呼ばれています。
黄色ブドウ球菌による食中毒は
ブドウ球菌食中毒はエンテロトキシンを、食品と共に摂取することによって起こる毒素型食中毒です。
ブドウ球菌食中毒のすべての食中毒に占める割合は、1984年以前は 25~35%であったが、年々少なくなってきて、1997年には3%まで減少しました。
ただ、2000年には加工乳が原因となった雪印ブドウ球菌食中毒では13,000名を超える患者さんがでました。
エンテロト含まれた含まれた食品を食べると、約3時間後に激しい吐き気・嘔吐、お腹の痛み、下痢を伴う急激 な症状を起きます。
一 般には1~2日で自然に回復し、死亡することはほとんどありません。
まれに発熱やショック症状を伴うこともある。重症例では入院することもあります。
とくに高齢者や乳幼児では注意が必要です。
予防には、食品製造業者や食品製造従事者への衛生教育の啓発が大切である。
手洗いの徹底、食品の10℃以下での保存、手指に傷や化膿のある人は食品を直接 触ったり、調理しないなどのことを徹底することが大切です。
さらに調理にあたっては、帽子やマスクを着用し、調理したものはできるだけ早く食べるように心掛けることが重要です。
黄色ブドウ球菌による食中毒の予防策
- 食品の適切な温度管理(特に冷蔵保存)
- 調理器具や手指の徹底した衛生管理
- 食品の早期消費
- 調理後の食品の常温放置を避ける
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症