エボラ出血熱はどんな感染症か
エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症です。
ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱等とともに、ウイルス性出血熱の1つです。
エボラ出血熱は致死率が高いことから、世界的な流行になると深刻な事態となります。
体液や血液に接触することによってヒトからヒトに感染します。
アフリカの国々ではしばしば流行が発生しています。
最近のアフリカ諸国でのエボラ出血熱の流行
2018年~2019年コンゴ民主共和国
コンゴ民主共和国の北キブ州およびイトゥリ州を中心に疑い例を含め927例(死亡584例、致命率63%)の患者が発生しています。
今回の流行では、過去の流行に比べて女性や小児の発生が多いとされています。
また、隣国のウガンダでは2019年に4,500人の医療従事者を対象にエボラウイルスに対するワクチンが接種されています。
2018年コンゴ民主共和国
2018年5月、首都キンシャサから約700kmに位置する赤道州においてエボラ出血熱疑い患者21例は発生しました。
そのうち17例が死亡しています。
7月に終息するまでに合計54例の患者が発生しました。
そのうち33例が死亡し、致死率は61%と報告されています。
2014~2016年西アフリカ
2014年3月に西アフリカのギニアで最初の流行が起こりました。
患者・感染者が国境を越えて移動することにより隣国のリベリア、シエラレオネへと流行地が拡大しました。
WHOは2014年8月に公衆の保健上の緊急事態を宣言しました。
流行は約2年間続き、2016年3月に公衆の保健上の緊急事態が解除されました。
最終的には疑い例を含み合計28,616例の患者が報告され、致命率は40%と推定されています。
これまで知られている流行のうち最も大きな流行となりました。
エボラ出血熱の治療や予防は
現時点でエボラ出血熱に有効な薬剤はありません。
新型コロナウイルスに有効な薬剤であるレミデシビルは本来エボラ出血熱の薬剤として開発され、今後有効性が検証されると思います。
予防には現在、臨床的な有効性を確認しつつあるワクチンがあります。
まずは、医療従事者や公衆衛生携わる人たちを対象に接種し、その後一般の住民に接種される予定です。
WHOが中心となって、エボラ出血熱の流行地域のアフリカの国々でワクチンの接種が進められています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症