感染を防ぐ大事な作業 滅菌・消毒(第2回)
すべての微生物がいなくなる状態。それが滅菌です
今回は滅菌について解説します。
滅菌はすべての微生物を完全に除去して、無菌状態を作ることです。
しかし、これは状態を作ると言うよりも、微生物が生き残れる確率で表現されます。
一般的には1個の微生物が生き残る確率が1/1,000,000以下であることが基準とされています。
滅菌の方法にはいくつかありますが、最も多く用いられている方法は高圧蒸気滅菌法でオートクレーブと呼ばれています。
この方法は10~50分の短時間で、121~134℃の高温と高圧で滅菌します。
毒性がなく、周囲の環境も汚染しないことが優れていますが、滅菌する機材が傷つきやすい欠点があります。
ただし、大型の機械を使えば、一度のたくさんの物品を滅菌できるため、病院などではこの方法によって滅菌しています。
次にエチレンオキサイドガスを使った滅菌の方法があります。
この方法は比較的低温(40~60℃)で滅菌できますが、時間は2~24時間と長い時間が必要です。
利点としては、滅菌する器材を傷つけることがほとんどありません。
しかし、有害なガスを使用するので、十分な換気をしないと人体に悪影響を及ぼします。
最後にプラズマ滅菌法があります。
この方法も短時間で、比較的低温で、しかも人体への影響や、環境の汚染もない優れた方法ですが、
一度に処理できる器材の数が限られているため、病院などで多くの器材を滅菌する際には不向きです。
今回は滅菌の方法について解説しました。
一般生活をしていると滅菌することなどは必要ないと思いますが、病院などでは大切な作業の一つです。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症