今日の新着記事 抗生物質(抗菌薬)がウイルスにも効くと誤解している人が依然として約6割いることが、国立国際医療研究センター病院の意識調査で分かった。分からないと答えた人が2割強、効かないと正しく答えられた人は2割に満たなかった。2021年10月26日 配信 共同通信社
お母さん
抗菌薬はなぜウイルスに効かないのですか?
抗菌薬の作用する部位はウイルスにはないからです。
前崎 先生
抗菌薬が作用する部位はウイルスにはありません。
例えばペニシリンなどの抗菌薬は細胞壁に作用することによって殺菌作用を示します。
ところが、この細胞壁はウイスルにはないので、ペニシリンは効かないことになります。
お母さん
なぜ、多くの人が抗菌薬がウイルスに効くと思っているのですか?
これまで、風邪を引いたときなど抗菌薬を飲んでいたせいかもしれません。
前崎 先生
風邪の原因の多くはウイルスです。
そのため、ウイルスに効かない抗菌薬を飲んでも、効き目はありません。
しかし、これまでは風邪を引いて、病院を受診すると抗菌薬を処方してもらうことが多かったかもしれません。
お母さん
ウイルスに効かない抗菌薬を飲むことはなぜいけないのですか?
抗菌薬が効かない薬剤耐性菌を生み出すことがあります。
前崎 先生
ウイルスに効かない抗菌薬を安易に飲んでいると、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌を生み出すことがあります。
この薬剤耐性菌が蔓延すると、細菌の感染症が抗菌薬で治らなくなってしまいます。
さらに抗菌薬は比較的安全なお薬ですが、効き目のない薬を飲んで副作用が出てしまうと逆効果です。
ここがポイント風邪などの多くはウイルス感染症です。ウイルスには効き目のない抗菌薬を安易にに飲むと薬剤耐性菌や副作用の問題があるので、慎みましょう。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症