梅毒はどんな感染症か
梅毒は梅毒トレポネ−マと呼ばれる菌による細菌感染症です。
主に性行為によって感染する病気です。
菌が生息しているヒトの皮膚や粘膜に接触することによって感染します。
以前は輸血を介して血液から感染することがありましたが、今ではそのような感染はほとんどありません。
梅毒トレポネ−マは普通の細菌のように試験管内で培養することができません。
梅毒に感染するとどんな症状がでるか
梅毒は感染してから時間の経過とともに様々な症状がでます。
早期顕症梅毒 Ⅰ期:感染後数週間(3週間程度)が経過すると、梅毒トレポネーマが感染した部位に、初期硬結、硬性下疳と呼ばれる皮膚の病変が見られます。
また、その病変に関連するリンパ節が腫れることがあります。
痛みを伴うことはなく、これらの症状は約3~6週間で自然に治ります。
早期顕症梅毒 Ⅱ期:Ⅰ期の症状が治って4〜10週間程度経つと、梅毒トレポネーマが血液を介して全身へ血行性に感染します。
特徴的な症状としてバラ疹と呼ばれ、手足や背部などを中心に、痛みを伴わない紅斑ができます。
その他にも丘疹性梅毒疹、粘膜疹、扁平コンジローマと呼ばれる皮膚の病変が見られます。
また、発熱や倦怠感、全身性リンパ節腫脹など全身の症状を認めることもあります。
これらの症状もⅠ期と同様、これらは自然に治ります。
その後は全く症状を認めない時期が続き、数年から数十年経つと晩期顕症梅毒と呼ばれる症状がでますが、抗生物質が一般に使える現在ではそのような症状を認めることはほとんどありません。
梅毒の診断はどうやってするか
このような早期顕性梅毒の患者さんでは血液検査を行います。
血液検査には非トレポネーマ抗原による検査とトレポネーマ抗原による検査を行います。
感染初期には非トレポネーマ抗原による検査による抗体価が高くなります。
その後はトレポネーマ抗原による検査による抗体価が高くなってきます。
非トレポネーマ抗原による検査による抗体価は抗生物質で治療するとだんだん低くなってきます。
トレポネーマ抗原による検査による抗体価は抗生物質で治療しても高いままになります。
非トレポネーマ抗原による検査 | トレポネーマ抗原による検査 | 考えられる状況 |
---|---|---|
- | + | 治療後 感染初期 |
+ | - | 感染初期 偽陽性 |
+ | + | 感染 |
梅毒の血液検査は2つの血液検査の結果から判断します。
梅毒の治療は
梅毒は抗生物質で治療することができます。
ペニシリン系の抗生物質が最も有効ですが、その他にもマクロライド系の抗生物質も有効です。
近年、世界中で最も一般的な治療法であった、ペニシリン系の抗生物質の筋肉注射のお薬が日本でも使えるようになりました。
このお薬をお尻などの筋肉注射を1回すると梅毒の治療は済みます。確実に治療することができるので、病院で相談してください。
この注射をお尻に1回注射すれば、梅毒の治療は完了します。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症