いま、世界中で感染しているのはすべてオミクロン株
新型コロナウイルスのB.1.1.529系統の変異株(いわゆるオミクロン株)が圧倒的に多い状況が世界中で続いています。
世界中で検出されるウイルス株のほぼ全てはオミクロン株で、その他の変異株はほとんど検出ていません。
オミクロン株の亜系(BA・5)について
2022年1月にオミクロン株の亜系BA.4系統が、2月にBA.5系統がいずれも南アフリカで検出さました。
BA.4系統、BA.5系統が有する遺伝子変異はその多くがBA.2系統と共通しています。
BA.2系統との違いは、BA.4/BA.5系統はスパイクタンパク質に69/70欠失、L452R、F486V変異をもっていることです。
南アフリカ国内では2022年4月から5月にかけてBA.4系統、BA.5系統が占める割合が上昇し、BA.2系統からの置き換わりが進みました。
そして、この時期に患者数の増加を認めています。
ポルトガルにおいても5月にBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進み、感染者数の増加がみられました。
このことからBA・5系統は感染力が高いと考えられています。
BA.4系統、BA.5系統にワクチンは有効か
オミクロン株のスパイクタンパクのアミノ酸変異は30個前後で、これまでの変異株の7~13個に比べてとても多くなっています。
特に抗体がくっ付く部分が変異しているので中和抗体がくっ付きにくくワクチンの効果が低くなります。
実際にファイザーのワクチン2回接種3週後の血清中の中和抗体は、オミクロン株では1/23に低下していました。
モデルナのワクチンでも2回接種後の中和抗体は1/41~1/84に低下していました。
ただし、3回接種後はファイザーでもモデルナでもこれまでとほぼ同じ程度まで上昇していました。
ファイザーのワクチン3回目接種14日後の血清中の各亜系統に対する中和抗体の平均が、BA.1で900、BA.2で829でしたが、BA.4/5では275に低下していました。
4回接種の感染予防効果はオミクロン株が流行しているイスラエルから報告されています。
それによると3回接種群の感染率が4回接種から4週経過した群より2倍近く高くなっています。
しかし、この感染予防効果は接種後3週をピークに徐々に低下し、8週後にはほぼ効果がみられなくなっていました。
幸いに重症化を防ぐ効果は長期間維持されていました。
さらに、60歳未満の多い医療従事者を対象としたイスラエルの研究では、4回目を接種していない人に比べて4回目接種した人の感染予防効果に差は見られませんでした。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症