結核はかつては国民病と呼ばれていました。
結核は結核菌による細菌感染症です。
空気感染と呼ばれる感染経路のため、一度に多くの患者さんが感染する集団感染を起こします。
まだ、公衆衛生が十分ではなかった頃の日本では多くの人が結核に感染し、死亡していました。
また、結核は栄養状態が悪いと感染しやすくなるため、欧米並みの食生活になるまでの日本では結核の患者が多くありました。
その後、公衆衛生の向上や、日本人の栄養状態も改善し、結核に感染するリスクが少なくなりました。
また、ストレプトマイシンをはじめとするいくつかの結核に有効な薬剤も開発され、治療効果も高くなり、亡くなる患者さんも少なくなりました。
それでも、先進国の中では日本は人口当たりの結核の患者数は多い傾向が続いてきました。
その患者数が近年、やっと欧米並みに少なくなってきました。
それでもまだ結核の患者さんはいます
日本全体の結核の患者数は減少しましたが、いくつかの問題も残っています。
一つは都市部における結核の患者数がいまだに多いことです。
患者は東日本より西日本に多く、中でも大坂は人口当たりの患者数が日本で一番多い地域です。
二つ目は外国人の結核患者の増加です。
このことは東南アジアを含め、今でも結核の蔓延国から日本にやってきた外国人に結核が多く発生しています。
この傾向は今後も続くものとみられています。
結核は診断や治療の進歩とともに、今では患者数も減少傾向にあります。
それでも、まだ毎年結核患者は発生しています。
今後は結核の根絶を目指して、診断や治療さらに予防に力を注ぐ必要があります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症