新型コロナウイルスの治療としての飲み薬
今回、新型コロナウイルスの治療薬として塩野義製薬が開発した飲み薬が臨床試験の結果、軽症から中等症の新型コロナウイルスの患者さんに有効である結果が発表されました。
この薬はエンシトレルビル フマル酸と呼ばれる薬剤で、新型コロナウイルスの増殖を抑える働きがあります。
今回の臨床試験では日本、韓国、ベトナムの3ケ国で、1,821例の患者さんを対象としています。
これらの患者さんは新型コロナウイルスのオミクロン株に感染した軽症から中等症の患者さんで、その効果を偽薬(プラセボ)と比較しました。
お薬は1日1回、5日間、経口投与されました。
そして、オミクロン株に見られる主な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))などが良くなって消失するまでの時間を比較しました。
お薬を飲んだ人は偽薬に比べて早く症状が良くなりました
この薬を飲んだ人は偽薬を飲んだ人に比べて約24時間早く、オミクロン株に見られる症状が良くなったことが判りました。
症状が良くなるまでの平均時間はお薬を飲んだ人では167.9時間、偽薬を飲んだ人では192.2時間となって、薬を飲んだ人が早く良くなりました。
そのほかにも薬を飲んで3日後の新型コロナウイルスの量を調べてみると、偽薬を飲んだ人より、ウイルスの量が少なくなっていることが判りました。
さらに、重い副作用や、お薬を飲んで死亡した人もなく、比較的安心して飲むことができました。
この結果を踏まえて、厚生労働省は実際に患者さんに使うことができるかどうか手続きを行うことになります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症