ワクチン 東大が製造施設…来年度にも稼働 早期治験を支援

今日の新着記事 東京大は新興感染症の世界的大流行(パンデミック)に備え、国内の研究機関などが開発したワクチンを製造する新施設を来年度にも稼働させる。製造したワクチンを安全性や有効性を確かめる治験に使い、早期の実用化を支援する。東大は、平時からワクチン開発を行う国の「世界トップレベル研究開発拠点」の中核機関で、パンデミックに特化した大学の製造施設は国内で初めて2023年7月19日配信読売新聞

今回も生かし切れなかった2009年の新型インフルエンザの教訓

2009年に新型インフルエンザウイルス(H1N1)のパンデミックが起きました。

その時にこの新型インフルエンザに対するワクチンはすべて海外の製薬企業によって開発されたものでした。

当時は「輸入ワクチン」と呼ばれて、海外の製薬企業の2社から開発されたワクチンが使用される予定でした。

2009年の新型インフルエンザウイルス(H1N1)のワクチンを開発した企業

  • ノバルティス(Novartis)(スイス)
  • グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline、GSK)(イギリス)
  • サノフィ・パスツール(Sanofi Pasteur)(フランス)

しかし、その後この新型インフルエンザの病原性が幸いにして弱いことがわかり、実際にこのワクチンを使用することはありませんでした。

その後、このことを教訓に来るべき新たな感染症のパンデミックに備えて国産ワクチンを開発することが急務とされてきました。

衰退し続けた日本の感染症およびワクチン研究

もともと日本の感染症研究は、歴史的にはペスト菌を発見した北里柴三郎博士や梅毒研究の野口英世博士など、世界的にも顕著な研究成果を上げていました。

公衆衛生が整うと、感染症への関心が徐々に低下してきました。

製薬企業も利益になる高血圧や糖尿病などの生活習慣病の新薬の開発に力を注ぎ、利益の少ないワクチンの開発や生産には興味を示しませんでした。

2022年の日本における医薬品の売り上げ額の10位内にワクチンは入っていません。新型コロナウイルス感染症の影響で抗ウイルス薬が増加していますが、他の感染症関連の医薬品も上位には入っていません。

ワクチンの国内市場規模は、医薬品が約10兆円であるのに対して約3%程度のおよそ3200億円とされています。

ちなみにこの金額は世界のワクチン市場の総額約4兆円のうちのたかだか8%を占めるのみとなっています。

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さらに、現在の世界市場は欧米4社の寡占市場ともなっています。

AMEDに置かれたSCARDAの役割

今回も日本でワクチンが開発されなかったことを受けて、政府は日本医療研究開発機構(AMED)内に先進的研究開発戦略センター「SCARDA(スカーダ)」と呼ばれる組織を作りました。

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このSCARDAでワクチン開発に関する世界トップレベル研究開発拠点を整備して、ワクチンの研究・開発を資金で後押しすることになりました。

先進的研究開発戦略センター「SCARDA(スカーダ)」では、国内の複数の大学および研究機関に資金を提供することによってワクチンの研究、開発を支援する仕組みを作りました。

緊急時である今回の新型コロナウイルス感染症ワクチン開発では、約9億5500万ドルの資金を追加で得て開発を進めてきました。

そのようなことを踏まえて、わが国のSCARDAでは5年間で1500億円の資金援助を行うことが決まりました。

ここがポイント今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックに際して国産のワクチンが開発されなかったことを踏まえて、政府は巨額の資金を大学に提供して、ワクチンの研究、開発を後押しする組織を作りました。

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