抗菌薬のおかげで多くの感染症が治るようになりました。
抗菌薬はさまざまな感染症の原因となる微生物に有効なお薬です。
ペニシリンが発見されて以降、人類は多くの抗菌薬を開発してきました。
それによってこれまでは治すことができなかった感染症が治せるようになりました。
このことによって人々は長生きすることができ、より幸福な時間を送ることができるようになりました。
抗菌薬を使いすぎれば薬剤耐性菌が生まれます。
感染症の原因となるざまざまな微生物はすべて生き物です。
生き物は常に進化し、より強い子孫を残そうとします。
例えば、ペニシリンによって死滅する菌は、ペニシリンでも生き残れるような子孫を作ろうとします。
それが薬剤耐性菌です。
もし、ペニシリンがなければ、菌はそのような薬剤耐性菌を作る必要がありません。
すなわち、抗菌薬を使いすぎれば薬剤耐性菌が生み出せれる可能性が高くなってきます。
薬剤耐性菌は今後には人類の大きな脅威になるかも
これまで、人類は多くの優れた抗菌薬を作り出してきました。
しかし、これ以上に新しい抗菌薬を作り出すことが難しい状況になってきました。
さらに、感染症の原因となる菌のほうは薬剤耐性菌が増えています。
風邪に抗菌薬はいりません
多くの場合は風邪はウイルスの感染によって起きます。
抗菌薬は細菌の感染症には有効ですが、ウイルスの感染症には効果がありません。
風邪に不要な抗菌薬を使うと私たちの体の中にいる細菌が抗菌薬に耐性となってしまいます。
感染症の治療に抗菌薬は必要ですが、使用しなくていい患者さんに使うことによって薬剤耐性菌を生み出してしまいます。
そのために抗菌薬を適正に使用する試みがなされています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症