重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はマダニが媒介するウイルス感染症です。
原因となるウイルスはSFTSウイルスで、ウイルスを保有するマダニに咬まれることによって感染します。
マダニの活動が活発となる春から秋にかけて患者数が増加します。
潜伏期間は6~14日間とされます。
38℃以上の発熱で発症し、全身倦怠感や嘔吐、下痢などの消化器症状を認めることが多いとされています。
重症例では急速に進行して、多臓器不全になって死亡する症例もあります。
典型的な症例では、マダニに咬まれた部位に痂皮を認めることがあり、その部位の近くのリンパ節が腫大します。
血液検査では白血球数や血小板数が減少することが多く、肝機能異常などが認められます。
確定診断のためには専門の機関でウイルスの遺伝子検査や抗体検査をします。
SFTSウイルスに有効な薬剤はいまだにありません。
治療は対症療法と全身管理が中心となります。
ただし、マダニの咬傷によるツツガムシ病や日本紅斑熱との鑑別はつかないことが多いため、抗菌薬が投与されます。
マダニに咬まれないようにすることが最も大切です。
マダニの活動期の春~秋に野山に入る時には、できるだけ肌の露出が少なくなる服装を身に着け、野生動物にはむやみに接触しないようにしてください。
また、最近では犬や猫などペットに付着したマダニに咬まれて発症することも報告されていますので、犬や猫などのペットのダニの駆除も獣医さんと相談してきちんと行ってください。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症