梅雨の季節はジメジメ
美味しいワインは飲みたいけど
前回に続いてカビのお話しです。
カビは病気を起こすだけでなく、私たちの生活に欠かせない生物です。
そんなカビの中でアスペルギルスと呼ばれるカビの仲間がいます。
アスペルギルスはまさにパンやお餅を長く置いたときにできるモヤモヤとしたカビです。
このアスペルギルスは麹カビと呼ばれて、お酒やみそ、しょうゆなど私たちの暮らしに欠かせないものを作るときに大事な働きをします。
でも、このアスペルギルスは空気中にふわふわ浮いていて、それを吸い込むことによって肺の病気を起こす原因となるカビなのです。
このアスペルギルスに有効な薬であるアゾール系抗真菌薬(カビを殺してしまう薬)に困ったことが起きています。
実は、ワインの原料となるブドウの木の消毒にこのアゾール系抗真菌薬がたくさん使われています。
これは、ブドウの木がカビの病気になって、ブドウが取れなくなってしまうといけないので、農家の方がこの薬を使っているのです。
そうなると、ブドウの木にくっ付いているアスペルギルスがこの薬に対して強くなってしまい。薬が効かないアスペルギルスが生まれます。
そうなったアスペルギルスをもし人が吸い込んで、肺の病気になってしまえば、人の病気も治らないことになってしまいます。
このことは今、欧州を中心に問題となっています。
美味しいワインはたくさん飲みたいのですが、薬の効かないアスペルギルスが増えてしまうのも困ったことです。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症