4月9日,ニューヨーク州ニューヨーク市は,同市における麻しん(はしか)の流行を踏まえ,麻しん(はしか)の感染拡大に関する公衆衛生上の非常事態宣言を発出し,特に感染が多く確認されているブルックリン区ウィリアムズバーグ(Williamsburg)地区に在住,もしくは勤務,通学していて麻しん(はしか)の予防接種を受けていない全ての人に予防接種を受けるよう命じました 。https://www1.nyc.gov/site/doh/health/health-topics/measles.page
Q.麻しん(はしか)はどんな病気ですか?
A.麻しん(はしか)は麻しんウイルスによる全身性ウイルス感染症です。
麻しんウイルスはヒトを唯一の自然宿主とするウイルスで高熱、鼻汁、咳などの上気道炎症状の後に、発熱3日目頃から頬の粘膜に白色斑点(Koplik班)が出現します。その後、赤褐色の皮疹が顔や体に表れます。
Q.なぜ、ニューヨークでは麻しんが流行したのですか?
A.それは麻しんウイルスは感染力が強いからです。
麻しんウイルスは感染力がとても強く、1人の麻しん患者が免疫のない人に感染させる数は16~21人と言われ、20分程度同じ部屋にいると感染すると言われてます。また、空気感染するため離れていても同じ空気を吸っている人はすべて感染します。また、一般的なマスクは感染予防には全く役に立ちません。
Q. 麻しん(はしか)で死亡することはあるのですか?
A.合併症もありますが、死亡することは極めて稀です。
麻しんの合併症としては、肺炎と脳炎が重要です。肺炎は麻しん(はしか)の患者100人に5人程度、脳炎は1,000人に5人程度発症すると言われています。脳炎を合併すれば、死亡率は20%程度あるとも報告されています。
Q.ワクチンで予防できますか?
A.ワクチンで予防することが可能です。
わが国では2006年から風疹ワクチンと混合した麻疹風疹混合(MR)ワクチンの2回定期接種により患者数が激減しました。麻しん(はしか)患者との接触がはっきりしている場合は、72時間以内にワクチンを接種すれば発症が予防され、120時間以内なら重症の合併症が予防できます。
Q.近々、ニューヨークに行くのですが、大丈夫でしょうか?
A.抗体価を検査して、陰性の場合はワクチン接種をお勧めします。
麻疹抗体を検査して、NT法で4倍以上、HI法で8倍以上の抗体価があれば、発症する心配はないと思います。もし、それ以下の抗体価であれば、ワクチン接種をお勧めします。また、流行地にはなるべく立ち入らず、現地の最新の情報を把握にて、人込みなどはなるべき避けてほうが良いかもしれません。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症