現在の世界中でのサル痘の感染状況は
2022年5月以降、欧米を中心に、これまでサル痘の流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々への渡航歴のないサル痘症例が6,000例以上報告されています。
今回の流行で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う人が多く含まれています。
世界保健機関(WHO)に加盟している59の国と地域から、7月4日時点で、1月1日以降に診断された6,027例の確定症例が報告されています。
サル痘は簡単には人から人に感染しません
サル痘は簡単には人から人に感染しません。
この点は新型コロナウイルスとは大きく異なっています。
サル痘は病気の皮膚に直接触ったり、ウイルスが付いた寝具などに触ったりすることによって感染します。
また、稀に患者さんと非常に近い距離で、長時間飛沫をあびると感染することもあると言われています。
今回のサル痘の流行は感染した皮膚病変から性的行為によって感染した例が多いと報告されています。
サル痘は自然に軽快し、死亡率の低い感染症です
サル痘は特に免疫不全など抵抗力に問題のない患者さんでは自然に治る病気です。
また、アフリカなど途上国を除いては、死亡する人も極めてまれな病気です。
だたし、小さな子供や、免疫不全のある患者さんでは重症となることがあります。
多くの場合は2~3週間で、皮膚の病変はかさぶたになって治ってしまします。
サル痘の治療や予防は
サル痘は多くの場合は対症療法のみの治療で十分です。
重症なサル痘の患者さんでは天然痘の治療薬を使います。
サル痘にも有効なことが確認されています。
また、予防には天然痘ワクチンが有効です。
サル痘でも約85%の感染予防効果があると言われています。
日本でもサル痘の患者さんの看護や治療、検査に従事する医療従事者を対象に、希望すれば天然痘ワクチンの接種ができる準備が整えられています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症