現在のマイコプラズマ肺炎の発生状況
マイコプラズマ肺炎は、感染症発生動向調査において全国約500カ所の基幹定点医療機関(小児科及び内科医療を提供する300床以上の病院)から週単位で報告される5類感染症の一つです。
2014年~2023年での10年でみると、最も報告数が少なかった報告年は2022年(395件)で、最も報告数が多かった報告年は2016年(19,721件)でした。
新型コロナウイルス感染症流行開始後は流行状況に変化が認められ、2020年5月以降は報告数が減少しました。
直近の2024年は、2020~2023年と比較して報告数が増加しています。
マイコプラズマとはどんな生物
マイコプラズマは自分自身で増えることができる最小の生物と言われています。
小さい生物にはウイルスなどがありますが、ウイルスは自分自身で増えることができず、ヒトの細胞などの力を借りて増えます。
マイコプラズマはヒトの細胞など利用しないでも、自分だけで増えることができます。
マイコプラズマは細胞壁をもっていません。このことがペニシリンなど細菌には効く抗生物質が効かない理由なのです。
マイコプラズマによる肺炎は、頑固な咳が特徴と言われています。
専門的になりますが、聴診器で肺の音を聞いてみると痰が絡んだような音が聞こえることが少ないとされています。
その他にも血液検査をすると白血球の数がそれほど増えないことも特徴とされています。
マイコプラズマ肺炎の治療
マイコプラズマは細胞壁をもっていません。
ペニシリンなどの抗生物質は細胞壁にくっ付いて効果を示します。
そのため、マイコプラズマではペニシリンは効果がないことになります。
マクロライド系薬やキノロン系薬といった抗生物質が効くため、マイコプラズマ肺炎を治療するときは、このようなお薬を使います。
細菌と同じようにマイコプラズマでも薬剤耐性が問題となっており、マクロライド系薬が効かないマイコプラズマが年々増えてきています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症