結核。それは昔の病気ではありません。
結核菌の親戚。非結核性抗酸菌とは
結核の話も最終回です。
今回は、結核菌であって結核菌でない非結核性抗酸菌について解説します。
前回、結核菌は酸に抵抗性があるので、抗酸菌と呼ばれるとお話ししましたが、
この抗酸菌の中で、結核菌でない菌を非結核性抗酸菌と呼びます。
以前は非定型抗酸菌と呼ばれていましたが、それでは結核菌が定型で、その他が非定型とまるでおまけみたいに扱われていたので、呼び名がかわりました。
実は、私の医学博士の研究課題がこの非結核性抗酸菌の研究でした。
非結核性抗酸菌の中でも最も多い、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレと呼ばれる菌があり、英語の頭文字をとってMACと呼ばれています。
このMACは2種類の菌の総称ですが、従来の検査方法では、この2種類の菌を区別することができませんでした。
そこで私は遺伝子学的な検査法を応用することによって、この2種類の菌をそれぞれ区別することに成功しました。
そして、実際にこの2種類の菌によって起こる病気に違いがあるかどうか、あるいは薬の効き目が違うかどうかなどを研究して、その成果を論文にして医学博士を頂きました。
では、この非結核性抗酸菌は結核菌とどう違うのでしょうか?
最も大きな違いは、人から人には感染しないということです。
結核菌は同じ空気を吸っている人には感染します。
そのため、感染を防ぐには特殊な空調の病室で入院して治療することが必要となります。
それに対してこの非結核性抗酸菌は入院する必要がなく、仮に入院したとしても普通の病室で治療ができます。
それから、もう一つの大きな違いは、結核は患者数がどんどん減っているのに、この非結核性抗酸菌は患者数がどんどん増えています。
親戚同士のような菌ですが、その違いは大きなものがあります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症