モルヌピラビルはどんな薬か
モルヌピラビルは新型コロナウイルスのRNA合成の時にそこに取り込まれて合成を邪魔します。
そのことによってウイルス増殖できなくなり、効果を示すと考えれています。
これまで、治療効果を確認するための臨床試験(MOVE-OUT試験)が行われています。
MOVE-OUT試験の概要
- 軽症から中等症で、重症化リスクを少なくとも1つ有する、ワクチン未接種の成人を対象
- 1433名が参加し、モルヌピラビル投与群 716名とプラセボ群 717名に無作為割り付け
- 主要評価項目の入院と死亡について二群間で比較した
- オミクロン株は含まれていない
投与29日目までの入院した患者または死亡した患者の率は中間解析でモルヌピラビル群が7.3%、全体で6.8%といづれもプラセボ群より低く、治療効果があったと判断されました。しかし、この臨床試験にはオミクロン株の感染した患者は含まれていないため、その後の解が必要とされていました。
今回、オミクロン株でのモルヌピラビルの効果が解析されました
このようにMOVE-OUT試験で、プラセボに比べて優れた臨床効果が認められたモルヌピラビルについて、オミクロン株での検討がなされました。
まだ、論文などで公表されていないため、詳細な数字は不明ですが、結果して、入院患者を減らすなど重症化を防ぐ効果は認められませんでした。
ただし、モルヌピラビルが投与された患者は、治療を受けなかった患者より早く症状が軽快して、全快までの時間は短くなりました。
この結果からは、オミクロン株に感染した新型コロナウイルスの患者にモルヌピラビルを投与する必要性はないと考えます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症