BA.2.75系統は新たなオミクロンの亜系統株です
BA.2系統の亜系統であるBA.2.75系統は6月2日にインドから最初に報告されました。
それ以降もインドから多く報告されていますが、英国、ドイツ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドからも報告されています。
日本では空港検疫で最初は検出されていましたが、最近では検疫以外でも検出されています。
BA.2.75系統は多くのスパイクタンパクに変異がありますが、BA.1系統、BA.2系統などで見られたQ493R変異をもっていません。
これらのスパイクタンパクの変異はワクチンによる中和抗体から逃れる可能性があります。
インドの感染状況
インドではBA.2系統とその亜系統が主流でしたが、BA.5系統の割合が上昇しつつありました。
そのような状況の中で、6月以降BA.2.75系統の割合の上昇してきました。
インドでは5月には低い感染状況でしたが、6月以降には感染者数や死亡者数が増加傾向に転じています。
このことから、BA.2.75系統はBA.5系統より感染力が強いことが考えられています。
また、インド以外の国ではいまだBA.2.75系統への置き換わりが見られないため、病原性については不明です。
現在、世界中でさまざまなオミクロン株の派生系統が生まれていて、その中でもより注意が必要なものを、WHOはリスト化しています。
しかし、BA.2.75系統についてはいまだに正式な名称をつけていません。
そのため、SNSなどでは「ケンタウルス」と呼ばれています。
今後の状況が注目されてオミクロン株の亜系統の一つです。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症